石灰沈着性関節炎（肩の激痛）

石灰沈着性関節炎（Calcific tendinitis）は、肩の周りの腱や腕の腱が石灰化し、それによって炎症が起こる疾患です。
通常、肩関節周囲の筋肉や腱の中で起こりますが、他の部位でも発生することがあります。
石灰沈着性関節炎は、突然の強い痛みや激しい炎症、関節可動域の制限などを引き起こすことがあります。

この疾患は、通常40〜60歳の中年から高齢の人に発生し、女性に男性よりも多く見られます。
石灰沈着性関節炎は、多くの場合、自然に治癒することがありますが、痛みの軽減や関節可動域の回復を促進するために、炎症を軽減するための薬や理学療法などの治療が必要な場合があります。
また、石灰沈着性関節炎が複雑化した場合、手術が必要になることがあります。

石灰沈着性関節炎は、股関節や手関節などにも発症します。

整形外科でのX線（レントゲン）撮影で、肩関節に石灰沈着を確認する事ができ、発症後に強い症状を呈する急性型、中等度の症状が数ヶ月続く亜急性型、運動時痛などが6ヵ月以上続く慢性型があります。

石灰沈着性関節炎の原因は、現在のところ明確にはわかっていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。

１，「遺伝的要因」
遺伝的な要因が関与している可能性があります。
石灰沈着性関節炎は家族間での発症率が高いことが報告されており、特定の遺伝子に関連している可能性があります。

２，「加齢に伴う変化」
加齢に伴い、関節の骨や軟骨、腱などが変化することが原因の一つとされています。
年齢が上がると、関節に石灰化した組織が蓄積されることがあるとされています。

３，「代謝異常」
血液中のカルシウムやリンのバランスが崩れると、関節の組織に石灰化した物質が沈着することがあるとされています。
これは、代謝異常によって引き起こされる可能性があります。

４，「前立腺癌治療」
前立腺癌治療に使用されるアンドロゲン剤によって、石灰沈着性関節炎が引き起こされることがあるとされています。

５，「その他の要因」
肝臓や腎臓の疾患、高カルシウム血症、痛風、甲状腺機能亢進症、膠原病など、様々な要因が石灰沈着性関節炎の発症に関与している可能性があります。

ただし、石灰沈着性関節炎の原因については、まだ解明されていない部分が多いため、今後の研究が待たれています。

石灰沈着性関節炎に対する対策には以下のようなものがあります。

１、「経過観察」
多くの場合、自然に回復するため、軽度の症状では経過観察が行われます。

２、「薬物療法」
炎症を軽減するための痛み止めや消炎薬、または筋肉弛緩剤が処方されることがあります。

３、「理学療法」
関節の可動域を改善するためのストレッチングや、炎症を軽減するための温熱療法などが行われます。

４，「超音波療法」
超音波を使用して、石灰化した組織を分解する治療法があります。

５，経皮的破砕術（ESWT）」
高周波音波を使用して、石灰化した組織を破砕する治療法があります。

６，「外科的治療」
軽度から中等度の症状の場合は保守的な治療が行われますが、症状が慢性化し、痛みや運動制限が著しい場合は、石灰化した腱を摘出する手術が必要となることがあります。

重要なのは、早期発見と早期治療が行われることです。適切な治療が行われないと、慢性的な痛みや関節可動域の制限が残り、日常生活に支障をきたすことがあります。

石灰沈着性関節炎に鍼灸施術が有効だと考えられる理由は以下の通りです。

１，「痛みの軽減」
鍼灸によって、神経系や筋肉系に働きかけ、痛みを軽減する効果が期待できます。
２，「関節可動域の向上」
関節の可動域を向上させるために、鍼灸によって筋肉の緊張を解きほぐし、関節を柔らかくする効果があります。
３，「炎症の緩和」
鍼灸によって、炎症を抑制する効果があるとされており、関節炎の進行を遅らせることが期待できます。
４，「血行促進効果」
鍼灸施術は、血流を改善する効果があります。筋肉や腱の石灰化によって、血流が悪化している場合、鍼灸施術によって血行を促進することができます。
５，「自己免疫の調整」
鍼灸によって、自己免疫機能を調整する効果があると考えられており、免疫系の過剰反応を抑えることができます。
６，「筋肉の弛緩効果」
筋肉の緊張が原因となる痛みや運動制限を改善することができます。鍼灸施術によって、筋肉を緩めることができ、関節可動域を改善することができます。
７「自律神経の調整効果」
鍼灸施術は、自律神経のバランスを調整する効果があります。
石灰沈着性関節炎によって、自律神経の乱れが生じている場合、鍼灸施術によって自律神経を調整することができます。
８，「副作用が少ない」
薬剤治療に比べて、副作用が少ないため、安全性が高い治療法として注目されています。
９，「併用療法としての効果」
鍼灸施術は、他の治療と併用することができます。薬物療法や理学療法と併用することで、より効果的な治療が期待できます。
以上のような効果があるため、鍼灸は石灰沈着性関節炎の治療に有効であると考えられています。

ただし、石灰沈着性関節炎の症状には個人差があります。鍼灸施術が有効かどうかは、個々の症状や状態によって異なるため、鍼灸施術を受ける前には、専門家と相談することが重要です。